光景が見えそう
2015年01月20日
■鰊場音頭保存の動機■
父が明治初年に来道し美国に定住。海産問屋を手広く商い、ニシン親方衆との交際も広く、東北・北陸地方に顧客を有し、生ニシンの買い付け、ニシン粕、数の子、身欠きニシン、ニシン油の販売取引を行った。その父の手伝いで粒買船に電報を届ける際、威勢の良いソーラン節を歌いながら、ニシンを汲みあげている状況を目の当たりにしていた。
また、夜間には「かけまわし」と言ってニシン漁の情報をつかむために観音岬に行く番頭について行き、あちこちから聞こえてくる綱起こしの木遣り声を聞いて、勇壮な中に哀愁を帯びたかけ声に何とも言われぬ感動を覚えた。船漕ぎ歌にしても夕方網起こしに行く時は、各漁場が競走で勇ましく漕いで行くが、やがて5月になって、いよいよ切り上げる頃の漕ぎ方は、「流し櫂」といって、ニシン場も終わって近く故郷へ帰れるという安心感からか、5月の暖かい陽を浴びながら、ゆっくり漕ぐ光景は何ともいわれぬ長閑なもので、深く印象に残った。
さらに夕方陸揚げの終わった枠網についた数の子を落とす「子たたき」は、主に「岡廻り」という留守番役と女性の日雇いの仕事であったが、竹の棒で歌を歌いながら楽しそうに動作している風景も印象深い。 このように子供の時からニシン場の色々な作業歌の虜になって深く心に刻まれた。
河崎勇 記 「鰊場音頭三十年の歩み 積丹鰊場音頭保存会」より
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