数の子は音を食うもの
2014年12月29日
お正月になると、たいがいの人は数の子を食う。私は正月でなくても、好物として、ふだんでもよろこんで食っている。なかなか美味いものだ。
さて、どんな味があるかといわれもちょっと困るが、とにかく美味い。しかし、考えてみると、数の子を歯の上に載せてパチパチプツプツと噛む、あの響きが良い。もし数の子からこの音の響きを取り除けたら、とうていあの美味はなかろう。
音が味を助けるとか、音響が味の重きをなしているものには、魚の卵のほかに、海月(くらげ)、木耳(きくらげ)、かき餅、煎餅、沢庵など。そのほか、音の響きがあるためにうまいというものを数え上げたら切りがない。
もともと食べ物は、舌の上の味わいばかりで美味いとしているのではない。シャキシャキして美味いもの、グミグミしていることがよいもの、シコシコして美味いもの、ネチネチしてよいもの、カリカリして善なるもの、グニャグニャして美味いもの、コリコリしたもの、弾力があって美味いもの、弾力がないために美味いのも、柔らかくて善いもの悪いもの、硬くてよいもの悪いもの、…ざっと考えても、以上のように、触覚が食べ物の美味さ不味さの大部分を支配しているものである。そういう意味において、数の子も口中に魚卵の弾丸のように炸裂する交響楽によって、数の子の真味を発揮しているのである。それゆえ、歯のわるい人には、これほどつまらないものはないだろう。
数の子は他の魚とちがい、親鰊の胎内にいる時から、乾物を水でもどしたものとほぼ同じ硬さをもっていて、生で食べてもパリパリ音を発するものである。このごろは冷蔵のおかげで生の数の子や、生を塩漬けしたものが都会にきて賞美され、料理屋なぞは、見た目が美しいところから、これを用いているが、味本位の美味さからいうと、一旦干したものを水でもどしてやわらかくして、昔からの仕来り通りの数の子にして食べるほうが美味い。(※1)
干したものを水でもどしたほうが美味いというようなものは、海鼠(なまこ)とか、ふかひれ、ある種のきのこ類などにその例を見るが、あまり多くある例ではない。(続)
(※1)~そのとおりです。干し数の子、たしかに美味です。ただ、値段が…。
塩数の子を
このあと、私は薄味をつけます
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