モールス先生の小樽スケッチ(3)
2015年01月31日
モールス先生の小樽スケッチ 越崎 宗一 著より
宿の近くのアイヌ小屋で踊りと儀式が始まるという知らせをうけ、一行が見学に出掛けた。当時の地図によると、住初町、相生町、入舟町辺りにアイヌが居住していたようであるから、そのいずれかであっただろう。その印象を次のように誌している。
「室には三人のアイヌがいた。何れも立派な黒い髯と房々した長髪とを有し、容貌は我人に甚だ似ている。少しも蒙古人らしくなかった。この人々は床の上の大きな酒皿の周囲にあぐらをかいていた。一人が単調な踊りをして奇妙な手付きをし、恰かも窓、床上の日光、室内のあらゆる物、長竿に十二ヶ位の熊のどくろを刺した戸外の祭壇に礼をするような恰好をしていた。彼等は長い威厳のある髯を有し、皆聡明らしく見え、程度低く道徳心なき文盲の野蛮人で怠け者で飲んだくれで弓矢で狩りをしたり漁をして生活していると認めることが出来なかった。
七月二十九日札幌へ出立した。当時まだ鉄道がなかった(開通は十三年十一月)ので、徒歩か馬で行かねばならなかった。先生は数哩歩き、あとは初めて馬に乗られた。八百呎の絶壁カムイコタン辺の風景は殊にお気に召したようで、このスケッチも仲々うまい。この辺から馬上の人となり、馬にも馴れるようになった。
明治十一年といえば九十数年前のことであるが、先生のスケッチを写真(新旧とりどり)と対照してここに提出しよう。
(道文化財保護協会副会長)
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