鰊場のうた(9)~子たたき音頭
2015年01月19日
船頭は急遽、揚網を命じ、胴網、垣網を陸にあげ海岸に広げ、若い衆は網の端の方から細い棒を持って、網についている子叩きを始める。
また沖揚げをおわって空になった枠網にも、かなり数の子がついている場合なども、同じ要領で子叩きを行うのであるが、この時に子叩き音頭という歌が始まる。
お前好きだとて 親捨てらりょか
金で買われる 親じゃない
ヨーイ ヨーイ ヨイ ヨイ ヨイ
アリャラン コリャラン コーイトナ
・・・・・・・・・・・・・
咲いた桜になぜ駒つなぐ
駒勇めば花が散る
(以下繰り返す)
また、廊下の中や屋外に囲ってあった漁船が漁期になると海岸へ運び出され、出漁準備に入る。
この時はロクロや神楽桟などの道具は使わないで大勢の若い衆の肩や背で担ぎ上げるようにして移動させていく。
船頭の音頭で力を合わせさしもの大きな漁船がコロ木や辷り木の上を進んでいくのは勇壮なものである。
この時のうたはさまざまであって一定していない。船漕ぎうた、網起こしうた、キリ声いろいろとび出してくる。
このように大勢で力を合わせ呼吸をそろえて仕事を進めていく。
鰊漁場ではかならずうたによってまとめられている。「鰊場の仕事はうたで始まり、うたで終わる」といった老親方の言葉が成程とうなずかれる。
“船漕ぎうた”“網起こしうた”“キリ声”“子叩きうた”と、うたの意味と、どういう場合にうたわれたかについて書いてきたが、この歌のほかにもまだうたがあって、その作業内容によってうたい分けられている。
付記 小樽市忍路町の鰊場の会はこの無形の鰊場のうたの保存に努力している。
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