鰊場のうた(8)~鰊の産卵
2015年01月18日
ついでに鰊漁場の漁船のことを簡単に述べてみると普通、鰊場で使っている船を保津船と呼んでいる。その保津船で枠網を常時積んでいて鰊が郡来(ぐんらい)した時、枠網を船に吊るして鰊を詰めるのが、枠船といわれ、建網の上ズトのところを定位置としている。
一方、若い衆が常時乗組み一たび鰊が郡来(ぐんらい)した時、胴網を起こして枠網に攻め落とす船を起こし船といい、建網の尻ズトのところを定位置としている。沖揚げのとき枠船から鰊をすくい汲んで陸へ運ぶのが汲み船といわれ、いずれも平均して十石積みが標準とされており、貫にすると二千貫、トンにすると七・五㌧積載できる。
北海道鰊漁期を一、二、三、四期と区分され、一期は四月十五日までである。一期のうちに一通りの漁獲もあり、親方も船頭も若い衆も、村の人々もひとまず安心して、陸で身欠きにしんや鰊シメ粕の製造に忙しい日々を送っている。
沖の建網の方ももちろん引き続き投網して、船頭手伝いの老人一人で沖守りしている。
午後の夕食を終えると二、三人の年配組の若い衆を製造の方の万人にのこして皆起こし船に乗り置き泊りに行く。
船頭も若い衆も一応の漁獲と順調な作業の信仰で安心がでたのか、また今までの重労働のせいか、沖へ来ても最初ほどの緊張感がない。やはり油断が出る。
夜のちょっとのあいだに船頭が居眠りしているとき、僅かの鰊が乗網した。この季節の鰊が産卵のための接岸であるから、鰊場ではたとえ僅かな鰊でも網起こしをして船にあげておかなければならない。鰊がたちどころに網に産卵を開始するからである。
鰊一尾の卵の数は四、五万粒から十万粒といわれている。ほんの僅かな鰊でも、胴網、垣網ともに網の目が卵のため筵のようになりふさがってしまう。そうなると万事休す。網起こしなどできるものではない。
嵐の次の日
海はまだ
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