鰊場のうた(1)~船漕ぎうた

2014年12月08日

「留、お前やれ」と艫櫂(ともがい)を脇下に抱えた起こし船船頭から声がかかった。

「よしッ、一丁鳴くかあ」と留がハオイをとる。

(ハオイ)       (シタゴエ)

おーしこー        オーオーシコー

えんやああえー      オーオーシコー

えんやさーえー      オーオーシコー

おおこーいーよう     オーオーシコー

ほーらあ         ホーラアーヨェサーエー

えんやれ         ホーラアオーオーシコー

おこーいよー       オーオーソコー

             (以下繰り返す)

 いま、陸から保津船が沖へ漕ぎ出る光景である。十五、六人の若い衆がいっせいにハオイに合わせて早櫂をシタ声と共に漕ぐ。遠くで見ると一枚の早櫂のように躍動している。

 船の艫のたちばで艫櫂で舵をとりながら起こし船船頭は若い衆の動きをみながら時々立場の板子をドンと踏んで気合いを入れる。ハオイとシタゴエの一部が微妙に重なり合って、なんともいえない雰囲気が出る。

 ところどころに即興の歌詞を入れ混ぜ若い衆の気持ちをほぐす。これらもハオイをとる者の上手さかも知れない。

 この船漕ぎうたのうちにもいくつかの節回しの違うものがある。

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※ハオイ~船漕ぎうたのことで、大勢の漁夫のうち一人が音頭をとる。これがハオイで、ほかの漁夫はハオイに合せてシタゴエをとる。

~鰊場物語 内田五郎著 より