小樽の女 ⑧ 才女てい談(下)

2021年04月16日

題字 寿原秀子さん

カット 泉川二美さん(道展会員)

 

 対外的には強い団結

 工場街の女性に都会的美しさ

 

・・・小樽の女の自慢というのは…。

井口 粗削りだが情が厚いということにつきるのではないですか。

毛利 これで洗練されたら申し込み殺到だワ。

小杉 商店のオバサンにしても個性が強くガンコで、女学生なんかも多情多感なところが目立つわね。

毛利 芸者さんにしてもキップがよいですね。

井口 それでいて芸は一本シンが通っている。

・・・では、小樽の女がもっている社会的地位というか、発言力について伺いたいですね。

毛利 全道的にみても目ざましいと思いますね女性の道議会議員が二人も出ているのは小樽だけですからね。

小杉 労組や婦人団体でもシャキシャキした若い人がいますものね。

井口 ふだんは互いに足を引っ張り合っていてもイザというときには固まる特色があります。

毛利 小樽を悪く思われたら困る…という気持ちが反対の立場をとっている人のなかにも流れているのでしょう。

小杉 ‶あなた小樽?〟なんて聞かれると以前はコンプレックスを感じましたが、最近はかえって誇りに思いますね。やはり‶小樽の女〟になったせいでしょう。

毛利 女の発言力が強いということは、裏返しにすれば男が女に甘いとも受け取れるんですがどうも女の方にシッカリした方が多いように思えますね。女性の道議が二人出たということは男の甘さというのは当たらないと思います。お二人ともすぐれていることが男といわず女といわずに認められた結果なのではないでしょうか。

・・・たしかに、小樽の女性は生活の面がカッキリ出ていますね。札幌などは見てくれのよさはありますが、あまり頼りにならない。小樽は女性がシッカリしているからムコ養子で出世している人がたくさんいる(笑)

毛利 それほどこわがることはないと思います。(笑い)でも私たちが若い頃はずいぶん抵抗がありましたからね、いまはそれほど感じないところをみると小樽の街にも新しい空気ができつつあるんじゃないですか。

・・・小樽の女も分析すれば、いろいろなタイプがあるとおもうんですが、区域にわければどうなんです。

井口 手宮、高島といわれる浜の女、商店のオカミさん、それに緑町、最上町一帯山の手のインテリ主婦、この三つが代表的な小樽の女を特色づけていると思うんです。これにもう一つつけ加えれば奥沢工場街のムスメさんたちということになりましょうか。

毛利 手宮、高島はよく団結しますね。理非を問わず固まるところはたしかに特色があるわ。

小杉 対照的なのは山の手ね。札幌的なところが多くて、小樽の女の特色はあまりないような気がする。

・・・地方からの転任者が多いせいかもしれませんね。

井口 浜の娘さんは、見るからに健康で、ホッペタなんかリンゴのような新鮮な赤みをしている人が多いが、奥沢のゴム工場や菓子工場に働く人は、また別な美しさをもっていますね。ハダの色が抜けるように白くてヒトミがうるんだように大きくて全然都会的ね。

小杉 言葉さえ聞かなければハッとしちゃう。

・・・ところで、小樽の女性の思想傾向は、一体保守的なのですか、進歩的なのですか。

井口 戦前までは小樽は保守の本拠といわれて、保守的色強い街はでしたが、戦後は時代の流れをくんで進歩勢力がぐんぐんのびてきていますね。よそでは、保守でも革新でもないという層がかなりのパーセンテージを占めているのですが、小樽はこの中間というのが少ないですね。保守は保守、革新は革新とハッキリしている。小樽は四分六分の割合でこの傾向が出ていると思うんです。

小杉 六分が革新?

井口 四分よ。

小杉 遠慮なさらないで…。

毛利 あなた(井口さんに)のおっしゃるとおりだと思います。選挙のときでも小樽の女の気質がよく出ますね。どっちでもないという層はあまりありません。保守は保守、革新は革新とハッキリしている。昔から政争が激しい土地柄だったから、自然につちかわれてきたのでしょうか。

・・・結婚なんか、親が決めるのが多いようですか。

小杉 恋愛が多いようですね。

毛利 ハイソサエティーは、やはり親に相談して決めるという方法を取っていますね。職場で働いている人は恋愛が多いようですが…。

井口 恋愛のパーセンテージが多くなってきているのではないでしょうか。若い人が承知しませんから。

小杉 これからは、見合いなんていうのはスタれる一方ですわね。

井口 やはり本州のような伝統がないということが、自由な結婚を助長しているんじゃないでしょうか。

・・・小樽から出た芸能人は傑出しているが、一本杉的なところがあってあとが続かないといわれていますがやはり風土的な関係ですか。

毛利 小樽を離れると有名になってしまうらしいわ。ナンシー梅木にしても、柴田早苗にしても、私とは親しかったものですから実感が伴わないんです。

井口 小樽の女の生活に対する強い意欲が、芸能界にも現われているんだと思います。

小杉 小樽の女はたしかに生活力はあるわ。

毛利 芸者さんにしても、小樽の芸者はながめる芸者でなく、しゃべる芸者なんです。少しも気取ったところがなくて、人なつっこいところが身上ですね。

・・・ネチネチしないで、楽天的なところは気持ちがよいですね。ではこのへんで…。

‶全然都会的ね〟となかなか評判のよい奥沢の工場で働く娘たち=三馬ゴム第二工場