小樽の女 ⑦ 才女てい談(上)

2021年04月15日

題字 寿原秀子さん

カット 佐藤規子さん(春陽会会友)

 

出席者(発言順)

毛利昭子さん(道社会教育委員)

井口ゑみさん(道議会議員)

小杉八千代さん(源氏の会主宰)

司会・山口本社小樽支社編集部長

 

 どことなく荒けずり

 ‶情〟にあまえ郷土意識

 

・・・マスコミの怪物といわれる大宅壮一氏が、先年札幌から小樽にきて‶日本の美人山系の露頭部を浜で働く高島ムスメのなかに見出した〟といって大いに満足して帰ったそうです。きょうは同性の目からみて‶小樽の女〟はそんなに美人なのか、といったところから伺いたいと思います。

毛利 私、昭和九年に庁立(現桜陽高)で教えたことがあるんです。そして、四、五年たってから札幌で女学生を教えたことがありましたが、そのとき‶オヤッ〟と思ったのですよ。女学生でも小樽と札幌では全然感じが違うんです。豆にたとえれば、札幌は小豆みたい、小樽の女学生は白インゲンのようにシブ皮がむけて、色白で瑞々しい感じ。あのころは札幌は井戸、小樽は水道でしたから、水の関係かしらと思いましたワ。

小樽の女学生はシブ皮がむけて白インゲンみたい……。と毛利さん

井口 小樽以外のところからきた人にはやはり住み心地がよくなるまでに十年はかかるでしょうね。…年代的に見て、娘さんの頃は美しいが、年をとるとふとって見られるのが普通ですね。ソ連の女性なんかはこのよい例だという話ですが、小樽の女性は中年になっても美しさを保っている人が多いようですね。

小杉 魚が豊富なせいでしょうか。

井口 たしかに血色はよいですね。

毛利 残念なことには言葉づかいがお粗末すぎるわよ。この間、街を歩いていたら‶アイツだってかい〟と話している女の声が聞こえるんです。振り返ってみると、銀座を歩かしてもヒケをとらないキレイなお嬢さんなの。言葉と見た目のアンバランスに二度ビックリしたわ。どうも小樽人というのは男も女も声をコントロールすることを知らない欠点があるんじゃないかしら。

井口 たしかに話し方は下手だわね。方言は方言でよいと思うんですが、ふんいきを乱す話し方は感心しない。

小杉 根っからの小樽人はオダルといいますね。私は‶違う、オタルよ〟って訂正するんです。オダルなんてひどくいなかじみてイヤね。

・・・そこに知性の問題があるんじゃないですか。

井口 そうですね。しかし、札幌ではよく‶小樽の女は情が厚くてよい〟という評判です。飲み屋の女中さんでも、街の娘さんでも一度つき合ったらジーンと胸に焼きつく…な誉められちゃうなんてほめられちゃう。

・・・裏返しすれば、あまり利口じゃないっていうことですかネ。

毛利 小樽の女はソロバンがないのよ。商人の街のくせに…。買物をするにも大ザッパで本州にお嫁に行ったらとうてい勤まらないわね。

井口 たしかにそうね。それでいて、対外的なことになると、多少複雑ないきさつがあってもたちまち結束してしまう。小樽セクトというか浪花節的なところが多分にあるわ。

小樽セクトというか浪花節的なところも多分にあるワ……。と井口さん

・・・そこでお伺いしたいのは、女の人に郷土性はあるかということなんです。お嫁に行ってしまえば、そこが第二の故郷となるでしょうが、小樽を忘れ切れないという気持ちはあるのでしょうか。

小杉 人にもよりましょうが、小樽を忘れられない人が多いのではないでしょうか。私の子供たちは京都、大阪に連れて行ってもやはり小樽に早く帰りたいってセガみます。なにか暖か味がハダにシミ込んでいるのですね。

毛利 郷土性という問題から見れば、いまの世代は道産子三世ですからねぇ。少ないんじゃないですか。主人の実家の金沢あたりでは、お雑煮のつくり方でも、オセチ料理でも、折り目が正しくてやかましいんです。そして、その昔からのしきたりをどこへ行っても守ろうとする意識が強いんですね。小樽人っていうのは、もともと伝統がありませんし、真似ようにも真似ようがありませんから自然郷土意識というようなものも薄くなるんじゃないかしら。

・・・しかし、そうしたならわしを別としても、小樽からよその土地に行った女の方が、ほかの機会に小樽に結びつきたい…という気持ちはあるのでしょうね。

井口 生活の条件はたしかに小樽は悪いと思います。しかし、そういうものを越えて住みついた人は強い愛着心をもっているのでしょうね。

毛利 私は小樽脱出を考えている女の人が多いと思う。息子や娘をもったお母さんたちは、子供たちが本州に就職して、そこに一緒に移り住みたいという夢を抱き続けているんじゃないかしら。雪の重み、負担の大きい燃料費、冬のきびしさ、小樽のよい面は夏に限られているんですからね。東京の料理店で小樽出身の女中さんに‶小樽に帰りたくない?〟って聞いたら即座に‶二度と帰らない〟っていっていたのを思い出します。

・・・色白の美人で、気立てのよい小樽の女性がドシドシよそに出て行かれるのは残念ですね。

小杉 全部が小樽脱出をはかっているのではなく、それは個々の問題じゃないですか。

全部が小樽脱出をはかっているわけではないでしょう……。と小杉さん

毛利 さっきから、小樽の気温が悪いという話なんですが、世界的にみればよい方なんですね。もっと小樽人が考え方を新たにして住みよくする努力をすべきだと思うんです。外国からのお客さんはほとんど札幌より起伏の多い小樽にたまらない魅力を感じているのです。ここを忘れちゃだめですね。

井口 たしかに景色としてはよいのですがちょっと買い物をすると一ぺんで嫌われてしまう。応対が粗末すぎるからですよ。

・・・やはり荒けずりのせいですか。

小杉 売ってやる式はどうみても好感をもてませんね。

・・・さっきの郷土性という問題に戻りますが、やはり、小樽は札幌より郷土意識が強いと思うのですが…。

井口 地形的なものもあるでしょうが割合都会へ出ていく人をうらやましがらないようね。

小杉 たしかに、そういう面では保守的ね。

井口 小樽は小樽でひとかたまりという感じ、これが小樽をよくも悪くもしていると思うんですけれど…。

 

今日も 火遊びをしました

達摩ストーブでの燻製づくりも

良い具合に

いぶりがっこ 完成☻