海水浴地小樽
2015年08月27日
暑い太陽の季節がくると水辺が恋しくなる。海に川にプールにと、水が人々を呼んでいる。夏の短い北国で海水浴が楽しめるのは、七月末から八月上旬までのわずかな期間、加えて最近のレジャーブームを反映して一層青い海にひかれるのは当然であろう。海水浴人口も年々増加の一途をたどっている。
札樽地方といわれる小樽・札幌・江別とその近郊で人口九十万人、岩見沢、美唄、砂川、滝川、夕張近くまで加えると百五十万に近く、全道人口の三割弱を占める。シーズンが短ければ短いほど、海水浴は北国の人たちの最高の楽しみというわけで、小樽近郊の海浜は、太陽の光を全身に浴びてはねまわる若人たちの歓声でわきかえる。とりわけこどもは本能的に水に親しむ性質をもっているうえ、水泳が全身の筋肉を使う理想的なスポーツであるだけにまことに好ましい風景といえる。
昨年の道警の調べでは銭函から蘭島にいたる海岸に来遊した延べ数が百七十万、今年は二百万を越すだろうとの見方である。ところでそれに伴い悲しい事故も著増している。それが七・八月に集中し、年齢別では小学生と一般のおとな、つづいて幼児となっており、川での水死は海でのほぼ倍であるのが注目される。海での溺死はおとなが多いのをみても、大半は生半可な泳ぎの自信が災いしている。山での遭難といい海での事故といい、ともに不用意に性急に享楽だけを追って正しい基礎錬成をきらう現代風潮がここにもみられるようで、考えさせられる。
海水浴事故の救済ならびに防止については、日赤や警察の努力に深く感謝しているが、市としてもこの問題に真剣に取り組んでいる。昨年、小樽市が日赤に呼びかけ、道、札幌市、石狩町それに日赤、道警、教委、業者組合などを結集して札樽海水浴場対策委員会をもち得たことは、一歩前進だと喜んでいる。本年は各海水浴場救難態勢や事故防止措置、海水浴心得といった啓蒙運動が統一ある形で進められることになった。今後この態勢がますます強化されねばならぬが、盛夏の海を謳歌される人々もそれ相応にきびしい自戒をもってもらいたいと思う。また多くの海水浴地をもち受け入れ側にある小樽市民は、とりわけ細心の注意を払い、せっかくの楽しみを悲しみに変えることのないようにしてもらいたいものである。
ともあれ八月の石狩湾は真夏の太陽に照り映えてギラギラとまぶしいこれは冬の天狗山とともに小樽がもつ天恵であり誇りでもある。(昭和三十七年八月号)
〈市政メモ〉から
広報おたる・昭和三十四年六月号から昭和三十八年四月号まで、四年間四十七回にわたって、安達市長の執筆で連載したものの収録である。昭和三十五年八月から十月にかけて、日独青少年交歓指導者派遣団顧問として渡欧したときは、ローマからの通信で、紙面を多彩なものにした。最後の三編は、時事通信社から求められて、同社発行の地方行政版に執筆したものである。
~安達与五郎追悼録より
そば会席 小笠原
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