能楽堂(旧岡崎邸能舞台)

2024年01月31日

 CIMG0682いまは閑散とした能楽堂

 小樽公園にある公会堂の裏手、緑町に通じる紅葉橋の側に、公会堂と棟続きの二階建ての木造建物が能楽堂だ。

 建設は大正十五年。能を愛する岡崎謙氏が入船町の自宅に接して建て、死後、その遺志により二十九年、市に寄贈されたものだ。

 岡崎氏は明治十年、新潟の佐渡に生まれた。二十年代に小樽に移り、荒物雑貨商として財を成した。政治にもかかわりをもち、三十五年に小樽区議会議員に初当選して以来、昭和九年まで通算三十一年間市政の振興に尽くした人でもあった。

 公会堂の管理人の方に案内され、能舞台を見せてもらった。入口の引き戸二面には唐獅子が舞い、橋懸り(はしがかり)があり、鏡板には松、脇板には竹の絵がある。絵は狩野派十七台乗信(もちのぶ)画伯の筆によるもので、いまも色あせることなく当時の色調を残している。

 三間四方の舞台と四間余りの橋懸りは、ひのきが用いられ、要所には佐渡神代杉、道産松材が使われ、すべて格式にのった建築。

 いま、閑散と静まり返る能楽堂。もう一度ここで、彼の愛した能を舞うことはできないのだろうか。

~小樽の町並み 朝日新聞社編

昭和54年1月~6月より

IMG_2874公会堂

IMG_2871能舞台

≪指定第12号≫

~2017.2.14