岡崎 謙と能楽堂
2024年01月31日
海産物産・荒物商・倉庫業を営んでいた岡崎謙は、明治10年、新潟に生れた。
同35年、小樽区議会初当選、以来30年間一度も失脚する事なく、自治のためにその才を発揮。
人々の寄せる尊敬と信頼が窺えよう。
理財・係数の才に長けていた彼は教育を重んじる人物でもあり、その財を己がものにする事なく育英部を設立、学士の乏しい者たちに無条件で援助した。 数々の業績を惜しまれ、昭和29年没。
大正15年、住ノ江の私邸内に建立された能楽堂は松・杉・檜の特選材を用い、佐渡の神代杉まで使用した豪華な造りであった。
舞台正面の松・橋掛かりの竹・唐獅子その他の色彩は、能舞台の揮毫をもって家柄とする17代・狩野乗信画伯が2ヵ月を費したものである。
贅をつくしたその造りは岡崎自身が謡曲に長け、素人の域を脱した才によるもので、能楽師を呼び寄せ友人・知人に能舞台を催した。
明治の末から大正にかけ、小樽は日本経済にとって重要な位置を占め、港湾都市としても大きく飛躍、栄華を極め頂点を迎えた頃である。
東北・北海道で唯一の能楽堂は昭和29年、市に寄贈され、現在小樽公会堂に併設する。栄華の香りは既に消え失せてはいるが、当時を偲ぶ市民も多い。
~おたる 歴史への誘い
月刊ラブ おたる 平成2年4月号~4年12月号連載より
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