日本銀行小樽支店
2016年05月06日
所在地 色内町一の十一
所有者 日本銀行
建築年次 明治四十五年
日本銀行の建物は小樽にある石造建築の中でも美しい洋風建築であります。まず建物全体にルネッサンス・スタイルのバラディオ様式を取り入れ、古色蒼然とした中に重厚さがみちみちています。石の並べ方にも苦心のあとがみられ壁面の凸凹や装飾が何とも云われない親しみを感じさせます。また、窓の両端の柱には、ギリシャ建築によくみられるエンタシスを用い変化に富んでいます。建物全体がイングランド銀行のように城郭をほうふつさせ、市内では、一番西欧臭いムードを持っています。とくにドームが独特の曲線を天空に描き出していることがこの建物の魅力です。
立っている場所が有名な銀行街であったので、立派な建物がいろいろありますが、一段と際立っているこの日本銀行は多くの画人をもひきつけています。画家に云わせるとこの建物は、朝と夕方では色が異なり、非常に描くことが面倒だということです。また、夜のこの建物は実にシルエットが美しく、捨て難い味があるということです。
さて、この建物の設計は、赤レンガの東京駅や国技館を設計した辰野金吾です。辰野は工部大学校の一期生で卒業後、東大の教授となり大学を退職して、日本最初の建築事務所を作り、日本銀行の建築に着手しました。そんなわけで北海道の躍進都市である小樽支店をも設計したものと考えられます。
敷地面積は一四四三坪余(約四七六一.九㎡)本館はレンガ造二階建で、その地下全部は地下室であります。東南の一隅四階建の高塔を設け、総面積は二七一坪(八九四.三㎡)、金庫はレンガ造平屋建で四八坪(一五八.四㎡)、それに三棟九三坪余の附属室を備えております。軒までの高さが四三尺五寸(一〇.〇五m)棟までの高さが六一尺五寸(一八.四五m)です。さらに防火設備は四カ所に消火栓を完備しております。
工事使用の重要材料は岡山県北木島産の花崗岩と岐阜県赤坂産の大理石、本道大沼硬石と登別及札幌軟石北海道・小野田両会社のポートランドセメントと余市江別の火山灰及び石灰等であります。また、四二〇〇〇余貫(約一五.七五㌧)の内外鉄材、その他木材等、内外の美観と牽牛を保つ凡ての材料を用いています。
明治四二年七月六日起工、同四五年七月二五日竣工しました。使用延人員は六四二〇〇余人、総工費三十余万円、現在のお金で約七億円といわれています。
小樽の石造建築 堀 耕より
《小樽市指定有形文化財》
そば会席 小笠原
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