親風 という習慣

2014年09月07日

  この風の吹き方が、各地方の鰊漁場に与える影響が大きいようだ。鰊の接岸郡来に当たり、昔からいろいろいわれている。例えば鰊は潮には強いが風に弱いとか、強い風は鰊を連れて去るといったり、鰊は風に乗ってくるとかいわれている。アイタマ風(北西の風)が吹いた後に鰊が大漁するとは、よくいわれることであった。シモ風(北風)、アイ風(北北西の風)が吹くと必ず強い風と共に海が時化るので油断できない。鰊漁に携わる人達にとってこうした風に関する知識は必要であった。

 北海道の鰊漁場に、過去何十年も前から 親風 という習慣があった。旧暦の一月一日の明けがた、前浜を吹く風のことをいったもので、旧正月の元日に朝早く浜へ行き、その時吹いている風をみてその年の鰊漁を占う。ちょうど節分の豆占いと同じようなものであった。

 わが国では明治五年には、旧暦(太陰暦)から新暦(太陽暦)に切り替えられたが、漁村の人達はかんたんに新暦に馴染めなかった。長い間の習慣が身についていたことはもちろん、海の仕事に最も関係の深い満潮、干潮(浜ではちしごと呼ぶ)の日時を知るのに旧暦でないと出せなかったからであろう。私が子供のころ聞いた話だが、戦前の日本海軍は航海の時ちしごをみるのに太陰暦を用いているということであった。

 鰊獲りの人達は、当日朝早く浜に行って 親風 を見るのを楽しみにしていた。たまたまアイシモ風でも吹いていたらその喜びようは大変なもので、今年の鰊漁は豊漁疑いなしとその日以後は上機嫌であるが、下手にヒカタ風(南西風)が吹いていたりすると、俗に鍋の中の魚が逃げて行くというくらいの風なので機嫌が悪くなる。このようにその日の 親風 によって、その年の鰊漁が豊漁になるか不漁になるかを占う。また、判断して来るべき漁期に備える習慣が伝えられている。

 北海道西海岸はアイタマ風が一番喜ばれる。この風は産卵のため南下して来る鰊が、沿岸に接岸郡来しやすいからである。この季節は北海道では一番時化やすい。また一番寒さの酷しいころで、漁村の人達は熊の穴ごもりと同じように家の中に閉じ込もったきりである。

 漁村の慣習として旧正月の行事を非常に大切に行う。新の正月と同じに餅搗きから正月料理まで全部新しく作り、子供達はお年玉をまた貰えるのである。

 旧正月でもあり隣近所、友人、知人などが集まり、大人は大人同士で酒を酌み交わし、四方山話に花を咲かせ、賭け事をしたりして楽しむ。また子供は子供同士で広い家に集まって百人一首からいろはカルタ、双六などに興じ、これらとは別にあちこちの嬶さん達が集まってみかんや駄菓子をつまみながら、御亭主のたな卸をしたり宝引などをして日ごろの骨休めをする。

 むろん、漁の方は全然できない。いうなれば一年を通して漁師の骨休めの季節ともいえる。さて旧元日のあさはやく、日ごろ通いなれている海辺へ雪を踏みわけ、建網の親方も刺網の人達も 親風 の風定めにやって来る。

 やや暫く浜で一同で語り合い、喜色をうかべて家へ戻って来ると、早速お内儀さんから

「お父う、今年の 親風 どんなあんばいだね。」

「おお今年はいいぞうー」

 

 

CIMG5604海水浴シーズンの終わった東小樽海岸

CIMG5605築港臨海公園では~何か催し物?

CIMG5606アクアスロンが開催されていました。

「スイミング1.5キロメートル、ランニング10キロメートルか。」

市場を見て。

再び、

CIMG5611その昔、鰊漁が行われていた熊碓海岸へ

CIMG5612今日の遅い昼食は ここで

CIMG5613今日は西風 ここで鰊漁が・・・

 

CIMG5619昨日、花火大会があった祝津の灯台とニシン御殿