親風
2014年09月06日
今日の熊碓海岸
鰊漁場で生活していると、天候のことを自然に覚えてくる毎日が海や天候が相手なので、好むと好まざるとにかかわらず、昨日の天候、今日の天候、明日の天候と天候の先取りをして仕事の準備やだんどりに応用しなければならない。
だいぶ以前から晴雨計(バロメーター)が一般の漁場にも備えられて天候の良し悪しを予測、判断したり、測候所の天気予報の発表などでその日その日の天候を的確にとらえて、漁期中には沖の網や船の対応策を講じたり、製造加工のばあいだと雨風に対する処置を考えるといったことが非常に大切なことがらであった。
一般漁場の人たちは天候などと標準語は使わないで日和(ひより)と呼ぶのだが、これも方言化して´ひゆり´と言っている。鰊場の親方や船頭はこのひゆりを的確にとらえて、総てに適切に処置していくことが、その漁場の安全と利益とに大きく影響してくるのである。
浜の人達は老若男女みなひゆりの見方が上手だった。朝晩のあいさつから日常会話、家庭内のやりとりまでこのひゆりが入ってくる。
「おや、隣の母ちゃあァ早あィごどどごさ行くんだね」
「ハイ、なんだかシタキ(強い雨風が合間に来ること)つけて荒れてきたので浜さ行ってお父ゥに手伝って舟を陸(おか)に揚げてくるべいと思ってハイ」
小学校に行く児童が登校まぎわに、父親に
「父ちゃあ、このひゆり、学校から帰るまで大丈夫だかなあ」
「おお、この案配じゃ、あぶないもんだ。合羽を持って行け。もしあまり降ったらドヤス(雨風が一時休むこと)を見て帰れよ。」
四月下旬の季節風が吹くころになると
「貴方(あんたー)、そろそろヒカタ(南西の風)が強くなるころだから屋根の柾がとばされないように石でもあげて置いたらどんだね。」と妻君から注意がでる。
また浜の人達は専門的にわからなくても、譬え話でいい伝えられているからひゆりがわかる。
〈カラスが水浴びしているから雨が近い。〉
〈月にオヤク(暈)がかかったからヤマセ(東風)が吹いて荒れる〉
〈朝ピカ(朝日がこぼれる)はその日に雨が降る。〉
〈スズメが水浴びしているので雨が上がる。〉
〈小樽近海だと向い山(増毛連山)がハッキリ見える時は時化の前兆〉
〈夜、星がたくさんハッキリ見えてキラキラかがやくと天気が変わる〉
〈海辺の石が波の退く時に強い音を出すときは時化る〉
などいろいろの文句があるもので、私が少年のころ、祖母や母から聞かされた言葉が今でも耳の底に残っている。昔の人達は学問や機械の無かった時代に、長い間の体験や自分の勘で自然の法則を会得したらしい。
鰊漁場で風の呼び名はそのところで変わってくる。
上図はだいたいの小樽近海のいろいろな呼び名をまとめてみたものであるが、北海道西海岸では道南地方、寿都地方、積丹を中心とした地方、石狩湾内、留萌地方などで同じ風が吹いていても、呼び名の違いがあったり、また共通しているものがある。方言でアイ風という呼び名は、たいはんのところでは北風を指しているが、所によっては北北西のかぜをさしている。ヤマセ風は東の方向をさしたり、南東のほうこうを指しているところもある。 (つづく)
(~鰊場物語 内田 五郎 著 より~)
調べてみると
9月6日(土) 西の風後北西の風海上でははじめ西の風やや強く
甘露煮用の鰊
そば会席 小笠原
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