古き良き「小樽のひとよ」名ジャンパーは、小樽っ子ばかりだった~⑰
2019年01月06日
大倉山のヒーローの九割
最近の道新に、南部忠平さんと笠井幸生選手(今はコーチ)の一頁対談が出ていた。五輪金メダルの大先輩と後輩である。南部さんのロス五輪は一九三二年で、笠井選手の一九七二年札幌冬季と四〇年の差があるが、二人の結論は「オリンピックは勝たにゃ」である。ごもっとも。
それで思うのだが、今のタータン敷きの助走路を使って跳んだら、南部さんの七㍍九八は八㍍二〇以上に相当するだろうし、御本人も私にそう言っていた。彼の若い頃、私もそうだが、日本一の神宮競技場(国立)といっても助走路はデコボコだらけで、スピードの減殺は随分あったと思う。
反対に今、秋元正博選手が大倉山で一二二㍍を超すバッケンレコードをつくったといっても、昔の、あの山を削っただけの風の強い大倉シャンツェで、九〇㍍前後を跳んだ連中にしてみれば、現在の設備で一一〇㍍はいったろうと、その道の大家が推定している。
ただし、飛び方が違っている。それでプラス一〇㍍、計一二〇㍍。ま、この推算は甘いかもしれないが、戦前戦中のスキージャンプの大倉山制覇のほとんどが、小樽ッ子によって占められていたのは、どうしようもない事実である。
大倉山の年次最長記録(✕印は転倒)を並べてみましょ……。
昭7、五一㍍〇〇松山茂志(札一中)
8、五六㍍〇〇浅木武雄(樽中)
9、六一㍍五〇竜田峻次(早大)
10、六六㍍〇〇伊黒正次(札鉄)
11、六三㍍〇〇星野 昇(北商)
12、七〇㍍〇〇安達五郎(札鉄)
13、七九㍍〇〇浅木文雄(北商)
14、七二㍍〇〇岡村四郎(輪西)
15、七二㍍〇〇伊黒正次(北大)
16、七三㍍〇〇脇本春吉(北商)
17、八一㍍〇〇青木利美(北商)
18,19、20(戦争で中止)
21、七〇㍍〇〇若本松太郎(札雪友)
22、六九㍍〇〇若本松太郎(同)
23、六九㍍〇〇浅木文雄(小樽)
24、七一㍍〇〇星野 昇(小樽)
以上のうち竜田、伊黒、安達それに宮島巌(五輪出場)も同時代の樽中出だから「みんな小樽」と言っていいくらいだ。
飛び方の大革命
この後も二十七年に柴野宏明(早大)が十三年ぶりで浅木の記録をやぶり、次いで佐藤耕一(明大―雪印)、菊池耕一(同々)の一〇〇㍍時代に入るのだが、このへんから今のノルウェー式飛行スタイル、即ち、両腕を体側につけて、体を倒し、風圧を利用する飛び方に変っていくのだが、柴野、吉沢、佐藤が樽中の後身の潮陵高、菊池は庁商のあとの緑陵高と小樽っ子ばかりで、それに続く藤沢隆(世界選手権二位)も潮陵高―早大であった。
野口一家、それに秋野武夫
この小樽飛行隊を育てたのが、経済的には北の誉の財閥野口喜一郎で合宿所を作ったり、夜間照明を付けたり、中でもコーチの秋野武夫が野口の援助で始めた16㍉のフォーム分析は画期的なものであった。秋野は五十八年夏、七十九歳で他界したが、葬儀に野口、安達、伊黒、宮島ら昔の名ジャンパーが駆けつけている。そういえば、竜田弟の鳳三(早大スキー部主将)も去年六月に死んだ。
野口は樽中生から「一銭」という仇名をちょうだいする倹約家だったが、公的機関や、樽中、スポーツ関係に対する寄付は惜しみなく巨額を捧げた人で、長男の誠一郎が一昨年亡くなったものの、円盤投選手で三二㍍くらい投げていたし、次男の正二郎はジャンプで転倒して首の骨を折りかけて選手を断念したが伊黒時代の樽中選手で、後スキー連役員、合同酒精社長などを務めた小樽高商OB。
今の人は知るまいが、樽中の狭いグランドの崖に20㍍級のジャンプ台を作って、竜田や浅木兄らが上り下りして練習していたことがある。ガルミッシュ五輪の前のことだが、みな木綿のトレパンで飛ぶ。飛ぶと風でハタハタと激しくパンツが鳴る。これを見てから愚生は、暮夜秘かに白のトレパンをはいてスキーを担ぎ、あまり人の通らない裏通りを歩いて満悦するのだった。オリンピック選手になった夢を、ストーブの煙くさい町に描くのだ。少年の果てしない夢を。そのくせ学校正課のスキーの時間は、ヤレ頭が痛いの尻が痛いのと欠席ばかりしていた。小樽にいて全く滑れないのだ。ガハハハ。
(写真は「さっぽろ」道新より)
大倉山でW杯も
改修する前の大倉山シャンツェ
~見直せわが郷土史シリーズ⑰
小樽市史軟解
奥田二郎
(月刊ラブおたる39号~68号連載)より
昭和8年
野口喜一郎氏が造営した
潮見台シャンツェ~ナイター照明もありました
『3月に全国?全道?の少年ジャンプ大会も開催された という記事を見た記憶も…。』
小樽には以前、天狗山にもそして潮陵高校にも、ジャンプ台があったそうです。
小樽潮陵高校にある
樽中スキー部記念碑
野口・秋野氏顕彰碑
秋野スキー博物館でした
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