若い衆 若い者(もん)
2016年03月21日
鰊漁場に〝ヤン衆〟という呼び名がある。だいぶ以前から呼ばれている言葉である。たとえば〝鰊場のヤン衆〟とか、〝石狩ヤン衆〟とか……現在では一般の人々にも〝ヤン衆〟という呼び名が親しまれ、〝ヤン衆〟というとすぐ漁場の人とピンとくるようになってきた。
この〝ヤン衆〟という文字は、辞典にないところから方言であろう。いろいろ調べてみると、この呼び名は漁場の人を見下した意味にも受取れる。鰊漁場の人達は若い衆に対して〝ヤン衆〟とは呼ばない。むかしから出稼ぎに初めて漁場に来た十五、六歳の少年から五十、六十代の年配の漁夫でも、皆若い衆、若い者(もん)と呼んで気を使っていた。また当の本人達も〝ヤン衆〟という言葉に抵抗を感じていた。
昭和五十二年十一月のある日、テレビの演芸の時間に各都道府県の名産や方言をその地方出身の芸能人が紹介していた。その中に北海道も入っており、その北海道の方言で〝ヤン衆〟は「漁師のこと」と註訳付きで放映されていたが、これを見てこの表現は適当でないと感じた。〝ヤン衆〟という呼び名の語源がさだかでないのでなんともいわれぬが、全体の漁師を呼んだのではなく、ある特定の漁業従事者をさした呼び名だと思う。 北海道の方言週に依れば、「北海道アイヌは北海道をヤウン・モシリ(陸の・国)とよぶとあるところから、このヤウンに衆がつき内地衆という意味が出来たものといわれ、亦アイヌ語で網のことを『ヤ』というので『ヤ』ノ衆 (即ち網衆)が訛ってヤン衆になったものとも言われる」とある。
石狩地方では古くから〝石狩ヤン衆〟という呼び名があるが、この〝ヤン衆〟は鮭漁場で〝やんちゃ者〟の漁夫をさしていたらしい。子供のわがまま勝手なことをいったり、だだをこねたりすると〝やんちゃな童〟とよくいうが、大人の〝やんちゃ者〟になると手に負えない、箸にも棒にもかからない者達を最初「やんちゃな若い衆だ」と呼んでいるうちに〝やんちゃ衆〟となり〝ヤン衆〟になったという人がいる。この表現は正に当を得たもので、一つの語源をなしているかも知れない。
また意味が違うかも知れないが……。
~内田五郎 「鰊場物語」より
『青塚のおばちゃんのお母さんも「若い衆」と呼んでいましたね。』
久しぶりに
お出迎えは
小さなほや
と
中くらいのホヤ
と
ちょっぴり大きな海鞘
でした。
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