小樽運河⑤「中央橋とポプラ」
2016年10月04日
中央橋のそばにポプラの木があった。自然に生えたものであろうが、運河に育つただ一本の大樹である。汗くさい小樽運河の貴重なアクセントであったと思う。今度の埋め立て工事で切られてしまった。
北浜橋をのぞいて、中央橋も他の橋も、つくり替えられた。丈は低く、気がねしてか厚化粧がほどこされているが、〈運河にかかる橋〉の趣がまるでない。妙なことに金をかけるものだ。
ポプラのかげに木造二階建ての水上警察署があった。現在は小樽水産ビルが建っている。
小林多喜二(一九〇三年~一九三三年)は一九二八.三.一五の大検挙の様子を小説にして全国につたえた。
小樽警察署と水上警察署は五百人をこす検束者であふれた。窓を毛布でおおい、一人ずつ拷問にかけた。
一九二九.四.一六。再度の大弾圧。多喜二も若竹町の自宅から拘引された。
一本の老ポプラは、小樽運河七十余年の歴史をだまって見つづけ、だまったまま姿を消していった。
~1986年12月21日より
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