西海岸にしん漁場の食、自然、漁業 その5

2015年10月17日

(4)山とのかかわり

 西海岸地方の漁村は山とのかかわりも深い。漁期には漁獲した大量のにしんを大釜でゆで、水分と油をしぼって乾燥させるにしん粕つくりと、身欠きにしんつくりが大きな仕事である。にしん粕つくりには燃料として大量の薪を必要とし、身欠きにしんつくりにも、出来上がった製品を結束するための木の皮を必要としている。さらに漁具や食生活用具なども自分たちの手でつくることが多く、準備期間に漁夫たちが、これらの材料や薪を伐り出す山仕事も重要な作業である。

 焼尻島でも古くからこのような木材や木の皮の利用が行なわれてきたが、狭い島であるため、かなり早い時期に島の樹林のほとんどを伐りつくしてしまい、薪や木の皮なども対岸の天塩地方や小樽に求めるとともに、燃料は比較的早くから石炭に切りかえている。

 また、焼尻島ばかりでなく西海岸のにしん漁場では、野菜類の確保がむずかしいところが多く、春には山菜とりも大きな仕事である。にしん漁の終了後、漁夫たちを山に入れてわらび、ぜんまい、ふき、にお(えぞにゅう)などをとらせ、塩蔵あるいは乾燥させて大量に保存しておくのである。またこのとき、越冬用や翌年の粕たき用の薪を伐り出させる漁場も多い。

 このため漁家では山の神を祀る家もあり、十二月十二日には山の神(大山祗神)に鮭のかまぼこともちを供える習俗も受けつがれている。

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