小樽にあったモノレール計画 97
2022年08月26日
昭和初期に、小樽では地形の関係を重視したモノレール計画があったが、その発想には感心するものがある。
1927年(昭和2年)11月、小樽市港町22番地、小樽高架電気軌道株式会社創立事務所が発表した「小樽高架電気軌道株式会社設立趣意書」(次頁A)でA5版32頁のものである。
その中には、ドイツにおける各地のモノレールの写真4枚が掲載されている(そのうちの1枚が写真Bによる)。
その序言の一部を紹介したい。
『我小樽港は近時東亜の形勢の大変化に伴ひ地理的関係上其使命に一段の重さを加へー世界的に重視せられるに至れり。
日夜大船巨舶の出入止むことなく、百貨の集散日に月に増し、海陸 輸出入貨物五百万トン、価格に於いて実に五億二千餘万円を算する盤盛を見るに至りたるものなり。
かかる時に当り、小樽市の平面的発達に因る住宅問題の解決を計り、その交通の繫激を救ひ、而も当港の生命たる貨物の運輸を円滑鳴らしむるは、小樽時事問題として急務なりと信ずー。
昨秋に至り市の外園を一周する環状線として山手高架線を完成し郊外連絡の一助たらしめたりー。
ここにおいて吾人は提唱す。いまや昭和の新政なり。何すれぞ徒らに旧奮を墨守して路面電車耳に吸々たるやと。吾人の計画は小樽市の如き道路狭隘にして春秋における降融雪期の泥海も、冬季丈餘の積雪も恐るることなく、急勾配、急曲線も難ならず、しかも何等交通の障害を来さざる単軌高架懸垂式電車即を是なりー』と記している。
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本論として、「欧米における単軌懸垂式軌道の沿革及び現況」「単軌高架懸垂式軌道構造の外洋」(次頁Cによる)
「在来の電車に比較せる単軌高架懸垂式の特徴」「当式が路面電車に比較して普及遅かりし理由」「路面電車を小樽に建設せんとして起る支障」「交通機関としての自動車」「小樽市としての自動車」「小樽市営電車案の検討」「吾人が小樽に当式を採用せる理由」「採算より見たる小樽における電車営業の成績」「建設費概算書」「初年度収支予算書」「経営費概算表」「小樽高架電軌営業収支予算年表」の項目にわたり趣旨を名文で記している。加えて参考資料として「小樽市営電気軌道建設表と概算書」「小樽市営電軌営業収支予算書」「札幌電気軌道乗車人員収支額年次比較表」「札幌電気軌道運輸状況一覧表」及び「収支予算年表」「全国主要電気軌道会社営業状態調書」として、阪神電気、大阪電気、九州電軌、玉川電気、京成電軌など全国15の創立年月、資本金などをデータとして発表している。
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本市において、このモノレール計画は実現しなかったが、大正後期から昭和初期における世界的不況の時期に、このような運動を展開したことは注目するものがあると思う。
他都市と比較して、急勾配、急曲線の多い小樽、更に全国都市に比較して積雪量の多い小樽にとって、今日的にも、市民交通の安全は課題として続いている。
そんな時に今から70年前に発表された一冊のノートのモノレール設立趣意書は、発想の転換という意味から言っても読ませるものがある。
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