日本郵船小史6~(2)日露戦争中及び戦後の経営航路
2016年05月15日
(四)明治時代後期(明治31年ー45年)
(1)航路の変遷
(2)日露戦争中及び戦後の経営航路
(イ)日露戦争中の航路
日露戦争中当社の全船舶は殆ど陸海軍に徴傭せられ、残った小型船にて青森室蘭線及び北海道沿岸の航路を維持した。
神戸・小樽東廻線、同西廻線は傭船料の高低を度外視し外船を傭船して次の通り航海数を減縮したが、定期を維持した。
○神戸・小樽東廻線
従来3日1回を4日1回
○神戸・小樽西廻船
従来毎週1回を10日に1回
尚戦中戦後の当社小樽支店及 管下諸港の積揚貨物及び船客の数及び運賃は附表(1)の通りである。
・・・
(ロ)樺太航路の開設
戦後樺太が領有になるや当社は明治38年(1905年)8月田子浦丸を以て大泊小樽間の毎週1回の夏季だけの定期航路を創設した。明治43年(1910年)4月逓信省の航路補助を受け命令航路となつた。
(ハ)命令満期線の継続と廃止並びに新命令線
神戸小樽東廻線、同西廻線は政府補助の下に多年経営した重要航路であつたので、命令満期に至りたる明治33年受命の前記2線の逓信省命令航路を39年9月満期後も私設線として継続した。地祇に戦後の新命令航路は次の7線である。
○小樽九春古丹線(逓信省)
明治39年4月開始
○大泊小樽線(逓信省)
明治43年4月開始
○大泊稚内線(樺太庁)
明治44年8月開始
○小樽斜里線(北海道)
明治39年4月開始
小樽網走線(北海道庁)
明治40年4月開始
又命令満期の廃止航路は次の4線である。
○小樽九春古丹線(逓信省)
明治43年3月満期
○小樽斜里線(北海道庁)
明治40年3月満期
○函館・小樽線(北海道庁)
明治40年9月廃止
○室蘭・青森函館寄港(逓信省)
明治42年2月廃止
(二)神戸・横浜・函館・釧路航路
釧路は附近海産物の集散地で明治18年(1855年)開設の函館・根室定期航路により、函館経由で本州と取引されていた。
38年(1905年)釧路、帯広間の鉄道開通により従来一部小樽の商圏にあつた十勝平野が、釧路の商圏に入り、沿岸海産物を中心とした取引から一躍道東に於ける雑穀の集散地となつた。40年(1907年)9月釧路・旭川間鉄道開通は札幌との連絡成り釧路は益々活況を呈した。その前年39年に十条製紙の前身富士製紙は北海紙料(32年8月設立の前田製紙を富士製紙が34年に買収改称した)を合併し釧路工場とした。
釧路が水産物、雑穀の集散地となつた40年頃当社は神戸・横浜・函館・釧路航路を開設し、神戸、横浜と直取引出来る道を開いた。釧路方面の定期輸送は当社によつて初められ維持されていたのである。
(ホ)青森・函館・室蘭三港定期と青森室蘭直航路
明治26年(1893年)開設の三港定期航路を利用し、当社は北海道鉄道部、北海道炭礦鉄道及び日本鉄道の三社と連帯して33年4月1日より小荷物の35年(192年)12月1日より旅客小荷物、速達貨物の船車連帯輸送を開始した。
明治36年7月より三港定期航路の外に更に青森・室蘭の直船便を開始し、陸奥丸、東海丸(1170G/Т)を以て毎日交互両地を出港した。
明治41年(1908年)に至り、鉄道省は北海道鉄道経営の小樽・函館間鉄道(明治37年4月15日開通)が40年(1907年)11月1日に、日本鉄道経営の東北本線が39年11月1日にそれぞれ国有となりたるを機に両線を結ぶ青森・函館間に比羅夫丸、田村丸の2隻を以て連絡運行を開始したので、明治43年(1910年)2月当社の青函命令航路が廃止された。然し青森・室蘭航路があるので、室蘭は本州との連絡に支障はなかつたが、函館との連絡を絶たれたるため、従来、函館経由横浜・神戸方面に積出した貨物輸送に支障を生じた。
当社代理店栗林合名会社(明治33年9月室蘭出張所を廃し栗林合名会社の前身室蘭運輸合名会社に代理店を委嘱した)代表栗林五朔氏は当社にその不便を力説して、神戸・横浜・函館・釧路航路の室蘭寄港を求め、明治44年(1911年)に実現し、就航船3000屯型大栄丸、三池丸が寄港した。これにより室蘭と本州府県と直接輸送が可能となつた。
即ち、吾社と栗林商会により室蘭本州間の定期輸送が開かれた訳である。室蘭港は石狩炭田及び木材の移輸出を除いて顕著な発達はなかつたが、明治40年に日本製鉄所室蘭港場、富士製鉄室蘭製鉄所の前身北海道炭礦汽船の輪西製鉄所、43年に王子製紙苫小牧工場の設立により活況を呈し、今日の室蘭発展の基礎となつた。
神戸・横浜・函館・釧路航路の室蘭寄港は大正3年欧州大戦の勃発による当社の船腹繁忙のため一時廃止したが、地元栗林商会が前記日本製鉄所、室蘭製鉄所、王子苫小牧製品の輸送を引受け、今日の発展を遂げた。
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