一つの建物が語る小樽 32
2016年04月18日
日銀、文学館、美術館の通り(緑山手線)を港に向って行くと、色内大通りの四ツ角に小樽郵便局、協同組合紳装、中央バス第2ビル、小樽ホテルの建物がある。
中央バス第2ビルは旧三菱銀行小樽支店で建築が大正11年。小樽ホテルは旧北海道拓殖銀行小樽支店で大正12年。共同組合紳装は、旧第一銀行小樽支店として大正13年に建てられたものである。
経済の中心街であるこの交差点に1年に一つずつ3年間続いて銀行が建てられたことは興味をひく。
今回は、このうち第一銀行小樽支店(現、紳装)について述べてみたい。
第一銀行は明治6年、東京に本店を置い発足した第一国立銀行がその前進であり、小樽に進出してきたのは大正元年である。
国立の二文字を削除して第一銀行と改称したのは、ちょうどこの年である。この建物が落成したのは大正13年であるが、地鎮祭が大正13年4月17日、工事起工が同20日である。
竣工は大正13年7月10日。そして落成式が同月13日に行なわれた。次にこの建物の工事概要を記してみたい。
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〇設計と監督 -中村・田辺建築事務所
設計・監督主任 田辺淳吉
同補佐 中村庸二
製図 前田一雄
現場 石川金四郎
〇建築主体工事ー株式会社清水組
現場主任 安藤兼三郎
暖房 高田商会
電話 中東電気商会
電灯 沖電気株式会社
家具 旭家具製造株式会社
金物 渡辺久雄
ガス 北海道ガス株式会社
金庫 佐倉金庫店
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建物様式は近世ドイツ式。面積は1963・5平方メートル。地下・屋上があるが地上の高さは18・18メートルの鉄骨鉄筋コンクリート4階建である。
地下岩層まで無筋コンクリート。柱と梁は鉄骨。床、屋根、金庫及び書庫室内部は鉄筋コンクリート壁体レンガ造りとなっている。
次に仕上げ大要をみると、外部の主要部は十勝産花崗岩。その他の大部分は人造石洗出し仕上。
内部の壁と天井の大部分は白漆喰塗。主要彫刻は石膏製で、3階の天井は金属天井。会議室は壁紙張りであった。建具はチーク材や杉などを試用。営業室客溜腰羽目や営業台は長州大理石。床は人造石塗及びリノリウム敷きとなっていた。
暖房装置は、アメリカ製重力敷低圧蒸気暖房で各室に放熱器を配置した。また、防寒として外部窓は1・2階の全部と3階の日本座敷は鉄障子二重とした。
防火設備として、本館窓障子は全部鉄製とし、出入口は鉄扉を取りつけ、背面二方の窓全部は鉄製捲上げシャッターとし、各階の内部要所には非常消火栓を設備していた。
水は水道給水で、給水湯の設備もあった。炊事、湯沸しはガス使用。屋根排水設備としての堅樋は凍結防止保温設備をしたり、雨水用特殊の装置もしていた。
電気設備をみても、電線はコンジットチューブに入れ、照明器は半開接式電灯とするなど見事な気くばりをみせた建物だ。
建築当時は1階が営業室、客溜、応接室、支配人室、金庫室、書庫室、宿直室、用度室、用務員室、湯沸室。
2階は会議室、予備室、食堂、料理場があり、3階は予備室、ビリヤード室、日本座敷、料理場。4階には書庫室。地階は暖房室、コート置場、物置があり、屋上には塔屋があった。(第一銀行は昭和46年に日本勧業銀行と合併し第一勧業銀行となる)
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現在、小樽市指定歴史的建造物は31棟あるが、お互いに向かい合って建っている旧三菱銀行小樽支店、旧北海道拓殖銀行小樽支店、旧第一銀行小樽支店は共に指定をうけている。
そして、これらの建物は小樽経済発展の要(かなめ)として、更に、小樽経済の発熱地帯となって活用されていることは力強い限りである。
昭和初期の写真ー右が第一銀行小樽支店(紳装)。左が小樽郵便局(以前の建物)。第一銀行の港側向いが三菱銀行小樽支店(現中央バス第2ビル)
大正13年、新築当時の第一銀行小樽支店。
現在の建物
~HISTORY PLAZA 32
小樽市史軟解 第2巻 岩坂 桂二
月刊ラブおたる 平成3年11月~5年10月号連載より
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