林屋製茶

2024年02月17日

IMG_0066元第一一三銀行だった林屋製茶の作業場

~屋根、昔のまま 元は一一三銀行~

 堺町の林屋製茶の作業場になっている石造りのこの建て物は元第一一三銀行小樽支店だったもの。第一一三銀行は国立銀行条例に基づき、明治十一年函館の富商杉浦嘉七、田中正右衛門ら数人により函館に設立された。北海道に本店を持つ最初の銀行で本州銀行に負けまいとしてか、本支店の建て物はみなりっぱなものであった。

 建て物の大きさは約百平方㍍と小じんまりした平屋の石造り四十㌢もある札幌軟石は土台もまだ少しの狂いもない。軒先には石に紋様が刻まれ、軒の厚さが一㍍近くもある。屋根がわらも当時のままで、陣太鼓模様がはいっている。

 この建て物、市内だけでなく全道的にも珍しいものといわれ、毎年、北大の先生が研究にきてたんねんに調べているし、本州からの旅行中の学生が『ぜひ写真をとらせてほしい』と訪れることも多いという。

 この由緒ある建て物が林屋製茶の手に渡ったいきさつについて同社の取締役経理部長、吉田義雄さんは『正確な年は知りませんが』と前置きして『第一一三銀行が閉店のあとアジア木材の所有となり管理内は神戸の平林という弁護士がしていた。その後、木材貿易商で小樽に住んでいたドイツ人、ゲルトネルさんが管理、太平洋戦争中はアカツキ部隊がはいっていた』という。

 林屋製茶が入手したのは昭和二十八年。管理人を通して買い取ったときは、内部も裏側の約五平方㍍の金庫も建てた当時のままだった。同社は初めそのまま使っていたが、仕事がしやすいように内部と、入口を四、五年前に改造、現在に至っている。

 石造りで周囲はがっしりしているが、九十年もたっているため、かわらの下に土を塗り、その下に分厚い石を敷いているので、雨漏りはないという。同社ではせめて屋根だけでも修理したい考えだが、この建て物を慕って戦後二回にわたり、ゲルトネルさんが訪れており、毎年訪れる北大の先生も、このまま大切に保存してほしい、といっており、同社でも『由緒あるものなので、手を加えないようにしている』と、保存に努めている。

~小樽の建築 北海タイムス

昭和43年7月24日~8月11日より

堺町は今日も観光客でにぎわっていました

~指定第9号 旧百十三国立銀行小樽支店

①堺町1-19 ②М26 ③木骨石造1階 ④S60.7.23

この建物は、小樽支店として建てられましたが、業務拡大に応じ同41年にこの通りの少し北寄りに支店が移されています。その後、木材貿易商の事務所や製茶会社の建物としても使用されました。平屋建ての比較的小規模な建物ですが、寄棟の瓦屋根に「トンガリ」飾りを付けた和洋折衷の構成で、明治の面影を良く伝えています。軒下に刻まれた分銅模様のレリーフが百十三銀行のシンボルです。

-歴史的建造物ガイドマップより-

~2018.9.4