岡田倉庫

2015年04月11日

CIMG9641岡田倉庫(上)と昔ながらの出入り口

岡田倉庫(現「高木商事倉庫」色内2の1の15)

 人生の最後の姿を、無残にさらしているようだ。

 屋根は大きく弓撃ってゆがみ、わずかに残ったカワラは、さびついたトタンにかろうじてしがみついているよう。壁の軟石も、ところどころスッポリと抜け落ちて暗い内部の空間を見せている。「南浜三丁目」いまはない町名がやっと読み取れる昔の木製の町名表示板、「湯丹保 たらひ」「金象印シャベルスコップ」など数カ所の出入り口トタン板に描かれた昔の宣伝文句がそのままなのも、一層、哀愁を誘う。

 三軒ほど隣は、観光客でにぎわい始めた旧小樽倉庫。だが、こちらの倉庫に真剣に目を向けた人は恐らくいないのではないか。

 前回紹介した広海倉庫と同じく明治二十二年に立てられた現存最古参の倉庫。二棟が並んでおり、いずれも木骨石造平屋建て。面積は合わせて約六百六十平方㍍。現所有者の高木商事は昭和二十七年に買収し、以来、流し台、ストーブなど金物製品の倉庫として使用している。

 「気を使って大変ですよー。」

 同社によると、内部の木骨は雪の重みで傾き、土台の一部は腐っている。修理しようにも、大工さんも怖がって、屋根に上りたがらない。このため、他の倉庫が一冬二回雪下ろしをするところを三回、雪が少なかった今冬も二回下したという。

 同社は、「残せれば残したい。だが現状では、せっかくの市歴史的建造物指定も受けるのは難しい。」と、苦渋の表情。小樽運河沿いの中心部にあるだけに、何としても保存したい建物だが、復元への膨大な費用などを考えると、今回選定された二十八棟のなかでも、最も困難なケースの一つとなりそうだ。

~おたる遺構再見5 読売新聞社編 昭和60年5月14日より

 

CIMG9831

 明治二十二年建設と云われる、岡田倉庫の解体に立ち会える機会を得たが、構造は巾広の基壇石二段積の上に外側は石積、内側に土台を載せ木部軸組を組みキングポストトラスを取る、構法としていた。床下には、ほたて貝の層を移植砂中に設け、湿気対策をこうじていた。壁は、内側に堅羽目板を張り、石面とは中空層を設けるなど湿気対策に気を配った構造と思われた。また、近年、耐用年限がきたために、市内倉庫の冬期倒壊の例を見たが、それらは木部腐朽による倒壊であった。

~重要文化財 旧日本郵船株式会社小樽支店保存修理工事報告書より

CIMG9909ここが岡田倉庫があったところです